Mr.Children『REFLECTION 第二部』大空へ飛び立つ鳥

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こんにちは、kumaです。

 

前回は『REFLECTION』の主題としてあげられている、『夢や現実の対比』と『欲望と宗教観』について考察していきました。

www.housework-kuma.com

 

そんな今回は、桜井さんがいかに悪夢から抜け出す事ができるのかを追っていきます!

『REFLECTION 第二部 大空へ飛び立つ鳥編』


『REFLECTION』
01.fantasy
02.FIGHT CLUB
03.斜陽
04.Melody
05.蜘蛛の糸
06.I Can Make It
07.ROLLIN’ROLLING〜一見は百聞に如かず
08.放たれる
09.街の風景
10.運命
11.足音 〜Be Strong
12.忘れ得ぬ人
13.You make me happy
14.Jewelry
15.REM
16.WALTZ
17.進化論
18.幻聴
19.Reflection
20.遠くへと
21.I wanna be there
22.Starting Over
23.未完


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理想郷を探して

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桜井さんは前作『[(an imitation) blood orange]』で夢に逃避し、苦しんでいました。

REFLECTIONに収録されている曲。
その中で初期の頃に製作された物には、その心情が表れています。


『REM』
これは桜井さんが夢の中で迷い、もがき苦しみ出口を探している歌です。

出口を探しているんですが、あなた知らないか?
僕は何故血を流しているの?

震災により、自身の思いを素直に表現できなかった辛い夢の中から脱出しようと苦しむ。

ここで何してるの?僕はどこにいるの?
こんな場所に来るのを 望んだ訳じゃないんだ

『SENSE』で結実した自己承認と他者との信頼関係。
そんな場所を彼は望んでいました。

ヘンゼルとグレーテルが迷い込んだ世界に
もう dang-ding-dong dang-ding-dong dang-ding-dong
こんな自由を奪うような夢のない夢なら見たくはない 要らない要らない

明らかに夢を『希望の思い』と『うなされる幻想』に分けて表現しています。


やはり彼は、ずっと夢の中にいたのでしょう。



ヘンゼルとグレーテルは童話に出てくる兄弟。
家族に捨てられ、魔女のお菓子の家から逃げ出すお話ですね。

大切な人(聴き手)から見放されたイメージが、前作から続いています。


因みにここで見放されるという視点で、面白い描写がもう一つ。

未完ツアーの『ニシエヒガシエ』では、鳥の顔をした男女が出てきます。
男女は欲望に駆られ、禁断のリンゴの果実を食べてしまいます。そして愛し合います。

二人は誤ってたいまつを落としてしまい『EDEN(エデン)』と書いた小屋が燃えてしまう。

罪人として追われた彼らは裁きを受ける。
罰として顔を失い心を抜き取られ、マネキンとしてショーケースに飾られます。

これは古代ヘブライ神話の『エデンの園』をモチーフとされています。

『エデンの園とは?』
神により生み出された初めの人間『アダム』と『イブ』が住む事を許された楽園(シャングリラ)のこと。
しかし二人は神の命令に背き、善悪を知る木の果実を食べてしまう。
二人は楽園から追放されるという、人間の欲望に繋がる話。

罪の意識から追われる描写です。

シャングリラを探して旅していたんだ
もしかして君のいる場所がそう?


理想郷(希望の場所)の在り処に心当たりがある様です。
聴き手を探しています。

Where will you go?怒っているみたいに
背を向けたまま

そんな理想と違うような優しくない女(ひと)なら居たくもない
要らない 要らない

前作のツアーで演奏された夢を象徴する楽曲『Pink~奇妙な夢』
この歌の中の女性も、寝返りを打って背を向けていました。

思い通りにならない苦しさに、自分を傷つける程の痛みを抱えています。

 

欲望という夢の中で

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そんな絶望感で溢れたもう一つの楽曲『WALTZ』

この楽曲はアルバム制作の中で一番初めに出来た楽曲であり、欲望や衝動に溢れた楽曲です。

「光」「夢」「微笑み」さようなら
「闇」「絶望」「悲しみ」こんにちは
商品に適さぬと はじき落されて
ベルトコンベヤーからのスカイダイブ

誰もが成功し他者から認められたいと願う世界。
そんな欲望をあざ笑うかのように、不適格とされる人間は奈落へ落されます。

REFLECTIONツアーの映像で女の子が見た夢の世界。
そこでも、欲望を纏った人の形をしたモノは次々と落ちていました。

一人そしてまた一人 はじかれて
繰り返される審査(テスト)に離脱者は増える
ショーウィンドウに並ぶのは一握りだけ
指をくわえて見てるのなんか嫌

次に落とされるのは自分の番。

そんな恐怖から逃れる為に、物事を知った振りをして空虚なIDカードを持つ(FANTASY)

映されるライブ映像。
破られたショーウインドウから、顔の無いマネキン(成功したとされる者)を持ち去る人間の欲望が映されます。

自分一人だけが取り残されたくない。


因みにこの持ち去られるマネキン。
先程出てきた『ニシエヒガシエ』で罪を犯した男女が飾られている場所から、持ち去られています。

つまりこれは『FANTASY』で歌われている
物事の裏側に何があるかも知らず、欲望に魅せられた人間たちという描写。

そんな欲望が再び罪を犯す、滑稽でもあり悲劇とも取れる人間の愚かさを表しています。


 

要求に合わせて変えられるスタイル
柔軟なとこが長所さ 履歴書のとおり
違う視点で見れば自分がないだけ
そこを指摘されりゃ 異論はないや

他者から夢(虚像)も求められれば、それに合わせて自らを捧げる。
それがまがい物(イミテーション)だとしてもいい。桜井さんはそう思ってきました。

しかしそんな祈りの中で、心は空虚な闇を抱えていました。

無防備な夢想家と揶揄される事に、心が挫けてしまっています。

半透明のドレスで 力なくふらついている
頭の中の「あきらめ」という名の亡霊
そいつを優しく抱きしめて 冷たい体を温めて
朝まで 静かに 踊って
その後 この手で殺すぜ

自分はショーウィンドウのマネキンの様に選ばれてもいないし、美しい衣を纏ってもいない。
もう全てを投げ出した。

だからもう、何もいらない。


この曲で桜井さんは、自分を葬る意思と他者を拒絶する叫びをあげています。

『SENSE』で作り上げた自己承認が、心から消えていく様は相当辛かったと想像します。

夢から飛び立つ鳥

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そんな『REM』や『WALTZ』から一年という期間を経てリリースされた『放たれる』

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出典:Mr.Children公式HP 放たれるジャケットより

ジャケットでは桜井さんだけ虹色のぼやけた光の中に佇んでいます。

これは彼だけが夢をみているからなのか、虹色に輝く希望を見つけたからなのか。

桜井さんはこの作品がタイアップについた映画作品に対し、こんなコメントを残しています。

「ケージの中で傷を癒した鳥が、再び空に向かって飛び立つ瞬間」この物語を読んで、そんなイメージが湧いてきました。
背負ってしまった運命。付き纏う寂しさ。拭えない悲しみ。思い通りに事が進まないもどかしさ。
そんな、重く薄暗い場所にある誰かの心が、自由と明るさを取り戻す大事な場面に、ただ寄り添うだけの最良のBGMでありたい、そう願っています。

そう、彼は夢から解き放たれました。


そしてこの『鳥』と『ケージ』が、スタジアムツアーで表現される『自由と未完の旅』へと繋がるんです。

あきらめかけたいくつかの 夢 希望 憧れ 幸せ
朝顔が空に伸びるみたいに その光をたぐり寄せる

右へ左へ 迷いながら その度に蔓を巻き
陽のあたる場所へ登りたい あなたもそこに来て

静かに希望を求め、手を伸ばし始めました。
かつて苦しみ探していた、あなたを呼んで。

あるときはもっと滅茶苦茶に 自分を傷つけたい衝動にかられてしまう
誰のせいにも出来ない不運を目の前に

震災から無力感や虚無感に襲われ、自分を責め続けた。
それは心の叫びとして、楽曲に表れてきた。

もう二度とその温もりに その優しさに触れないとしても
いつまでも消えない愛が ひとつあるの それだけで強くなれる
だからもう恐れることは何もないの
心は空に 今そっと放たれる

彼は苦しみの夢から、開放されました。
そして今、希望の未来を探し始めます。

そこにあるのは欲望や嘘にまみれた空虚な幻想ではありません。

終わる事の無い、未来がどこまでも続く夢。


 

現実と夢のあいだに

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未完ツアーのスクリーン映像はREFLECTIONツアーと異なった物になっています。

主人公は再び、男の子と女の子。
二人の状況や物語は違いますが、この話は並行世界で繋がっていると私は考えています。

男の子は歌い手(Mr.Children)
女の子は聴き手(あなた)

これは変わっていません。


ここで注目すべきポイントはやはりアートワークや映像にあります。

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映像作品のパッケージにはこれまた塔が。左が未完ツアー。

しかし以前描かれていた、右側のバベルの塔(欲望の象徴)とは異なり、完成していない骨組みだけの様子です。

右のREFLECTIONの塔は完成され、欲望が結実した様子が光と共に描かれています。

骨組みは『未完』を表しているのは言うまでも無いですね。
しかしよく見るとケージと鳥、そしてそこから飛び出す男の子が小さく描かれています。

目を凝らさないとわからない絵。これにはモチーフがあります。

ブリューゲル作の絵画『バベルの塔』も、米粒のように様々な人間の姿が描かれています。
その数およそ1400人!驚きですね!

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映像で、主人公たちの上に鳥の羽根が落ちてきました。
それは撃たれた鳥の物なのか、羽ばたきにより落ちてきた物なのか。

やがて2人は鳥を追い求め、走り出します。

ここで出てくる青い鳥は『夢へと導く希望の象徴』です。

天頂バスで出てくる青い鳥も、希望と幸せを表す象徴でしたね。


鳥を掴もうと、ケージから飛び出しながら二人は手を伸ばします。
ケージにはビルや争いの煙など、現実を表すイメージが描かれています。


女の子(聴き手)は鳥を掴むことができました。
様々な世界へ繋がる扉を次々と開き、旅をしていきます。

夢の世界(ライブ)の比喩ですね。


一方の男の子は光を掴む瞬間に、スクリーンは光に包まれます。


夢と現実を巡る希望への旅が、今始まります。

 

自由を求める心

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始めに演奏されるのは『未完』

さぁ行こうか 常識という壁を超え
描くイメージがホームランボールの放物線
そのまま消えちゃうかもな
いいさ どの道いつか骨になっちまう

現実の世界(常識)の扉を叩き、夢の世界へと旅立つ。
このケージにいても、きっといつかは自分に失望してしまう。

明け方にバスタブへ浮かべたモノクロの夢。
自分の存在を証明する時がきました。

「いっそ飛べない鳥の羽なんか もがれちまえばいい」
そう ぼやいてみたって未来は手を差し出しちゃくれない
ここがどこだとしても まだ出口まで遠くても
そのぬかるみを越え きっと辿り着く
胸の中の約束の場所へ

現実でくすぶっていても、未来への扉は開かない。
ここが悪夢でも、目指すべき水平線が見えなくとも。

いつか心の中に忘れていた場所へ、辿り着いてみせるという意思が感じられます。

ヘッドフォン フルボリューム 地下鉄のホームで
目をギラつかす資本主義者の巣窟へ
迷い込んできた鳥が 出口を探して飛び廻ってる

欲望が渦巻く夢の中へ、自分の心は迷い込んでしまった。
自分の目指す場所はここではない。

資本主義者の巣窟は、女の子がいた欲望の夢の世界ですね。

さぁユニフォームを脱いで自由を手にしたらいい
例えば僕は武将で慕った家来が寝返ったって良い
僕が誰だとしても みんな遠くで笑っていても
自分が誰よりちゃんと分かってる 胸の中の約束の場所を

既成概念で着飾った自分やIDカードを捨て、自由を手にしよう。


桜井さんは、今の自分たちの事をこんな風に答えています。

ツアースタッフにしても、いま出来るベストを初日から出してくれているわけだし、だったら自分達は、より良いパフォーマンスをして、そのスタッフ達に、「じゃあ、もっと良くしようと」思ってもらいたい。
そのためには、僕らが越えてかないと、離れていってしまう人もいるかもしれない。
「Mr.Childrenなんだからこれでいいじゃん。こうやっておけばいいんだ」って、そう思われるのが一番つまらないことだし。

スタジアムツアー2015 未完 パンフレット 桜井和寿発言より

ここまでのキャリアを築いてきた彼らの、初心を忘れない気持ち。

いえ、何周も様々な事をやり遂げてきたからこその気持ちなのかもしれないですね。

こんな気持ちがあるからこそ、彼らは約束の場所を知っているのかも知れません。

 

さあ行こう 常識という壁を越え
描くイメージは果てなく伸びる放物線
未来へ続く扉 相変わらず僕はノックし続ける し続ける


桜井さんは未完ツアーの映像作品で、こんな事を言及しています。

僕らの音楽自体も、自由で開放感のある大空に羽ばたくようなイメージと
でも打たれる痛みみたいな物の両極を
どっちも想像しながら聴いてもらえる様な深さとか
そんな作品にしたいとはいつも思うので
落ちてきた一枚の羽根から想像してほしいというか

私たちは目の前の事に囚われて、大切な事を見失いがちです。

情報を手にし世の中が便利になり、一人で何もかもができる様になった。
けれど実際は自分だけの鳥カゴの中で小さな世界を守り、相手や外の世界を想像できないでいる。

目の前にある、一枚の羽根。
そこにある事実や、物の裏側にある真実を想像してほしいという事。

そんな彼らからの、音楽を通じたメッセージ。


両極の想像力を働かせ、真実を見つけるというイメージは『SENSE』の主題でした。

強かった彼が、戻ってきたのかもしれません。


次回は、REFLECTION完結編。『未来へ託す夢編』でお会いしましょう!

 

Mr.Children『REFLECTION 第三部』未来へ託す夢
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