こんにちは、kumaです。
前回の『I LOVE U編』
幸いな事に見てくださった方がとてもとても多く、本っ当に嬉しい限りでした!!
今日はこれまでお話ししてきたPOP再検証の、ある意味で一つの着地点になります。
『Mr.Childrenが好きなら絶対知ってほしい。彼らのPOPミュージックへの挑戦 HOME編』
『HOME』
01. 叫び 祈り
02. Wake me up!
03. 彩り
04. 箒星
05. Another Story
06. PIANO MAN
07. もっと
08. やわらかい風
09. フェイク
10. ポケット カスタネット
11. SUNRISE
12. しるし
13. 通り雨
14. あんまり覚えてないや
家路への道を探す
Mr.Childrenは次の道を模索し、一つの楽曲へ辿り着きました。
それが『彩り』です。
この曲はap bank fesで初めて披露され、『HOME』を象徴する様な曲になりました。
ロックバンドとしてどう格好つけようか考えていた。
今は温かいものを普通に出せるけど、過去のMr.Childrenの楽曲を聞くと温かみの無さを感じる。
桜井さんはアルバムインタビューの中でこう語っています。
どの曲かは直接的には言及していませんが、恐らく『IT’S A WONDERFUL WORLD』より過去の曲を指しているのでしょう。
今この世の中で、自分が生きているっていうことを確認するためにロックが必要かって言われたら、たぶん、ほんとはあんまり必要ないのかもしれない。なぜならば、ロックなんかなくても地球は死の匂いでいっぱいだし、どんどん悪くなってるってことを、もうみんなインプットされてるから。
ROCKIN’ON JAPAN 2007年 4月号 桜井和寿発言より引用
Mr.Childrenはこれまで迷いや葛藤、暗闇の中から如何に光を目指すかという事を、希望を持って提示してきました。
様々な価値観の中で、自分の信じる物に対し苦しみを持って正解を見つけていく。
生と死、シニカルとダイレクト、ロックとポップのバランスを取りながら、光へ手を伸ばした一瞬の刹那的な輝きに、聴き手側は自分の心を重ねてきました。
ただもう、敢えて苦しみの中に自分の居場所を確認する時代は終わったのかもしれません。
そんな事はメディアや世界情勢、環境が日々痛いほど教えてくれるから。
であれば、個人一人ひとりの心の拠り所は何処なのか。
そういう状況の中でも日常の中に生きる喜びがあるんじゃないかって。死の匂いを見せつけないで表現できるカウンターカルチャーとしての『HOME』は、すごくロックだなっていう気はしますけど
ROCKIN’ON JAPAN 2007年 4月号 桜井和寿発言より引用
『IT’S A WONDERFUL WORLD』の頃には日常や世の中を『この醜くも美しい世界』と表し、絶望と希望を私たちに提示してくれた彼ら。
今は『ただいま』『おかえり』という温かみを持った言葉を、そっと目の前に置いてくれる。
そんなシンプルな言葉だからこそ、日常には混沌や絶望、暗闇が隣り合わせにある事を感じさせてくれる。
そして、私達の日常の素晴らしさを優しく肯定してくれる。
帰るべき場所
HOMEのコンサートツアーはアリーナ、スタジアムの2部に分かれています。
このアルバムの象徴的な楽曲『彩り』
アリーナツアーは彩りで始まり、そして彩りで終わりを迎えます。
個人的にホームのアルバムツアーとしての役割は、アリーナで完結していると感じています。
この年の5月10日にMr.Childrenはデビュー15周年を迎えました。
スタジアムツアー内で桜井さんは『HOMEらしい曲』と何度か口にしています。
通常のツアーであれば、アルバム楽曲は1/3程度含まれますが、このスタジアムに関しては1/5。僅か6曲です。
10年以上ぶりの披露となる『my life』
『CROSS ROAD』『シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~』
初期の人気曲である『星になれたら』『Tomorrow never knows』『名もなき詩』など、まるでベスト盤ツアーの様な曲が次々と聴き手に向けて演奏されていきます。
そう、『HOMEらしい』とは『自分たちらしい』なのです。
過去に行われたベスト盤ツアー『POPSAURUS』
それは自分たちのやってきた音楽を再認識し、あくまで『提示する』という取り組みでした。
しかし今の彼らは違います。
もうこの家がどんな形や色をしているか、歌い手も聴き手も皆知っています。
この家では楽しい事や辛い事をもあった。
けれど全てを共有し、ここまで過ごしてきた。
ホームというこの空間に全員が集まった今だからこそ、演奏すべき曲たちが空に向かって響いているんです。
アリーナツアーのセットでは、アーティストと後方にも席が設けられています。
これはMr.Children側からの「お互いを隔てる物は無いよ」というサインであり、心から音を楽しめる空間という表れです。
そしてスタジアム。まるで聴き手が喜んでいる反応を楽しむかの様に、これでもかとばかりHOMEらしい曲を演奏していきます。
その中には『虚構』(フェイク)からの『自己肯定』(Any)というHOMEという作品で投げかけた一つの答えが。
その答えを優しくを内包した『共有』(口笛)が言葉で表すことなく、ただ音楽にのって空に響く。
これまで行ってきたどのコンサートよりも、優しさと強さを感じます。
自分からの旅立ち
同じベスト的選曲のPOPSAURUSとは決定的に異なる点が。
『自身への許容』が生まれている点です。
POPSAURUSで披露された象徴的な楽曲
『優しい歌』
後悔の歌 甘えていた 鏡の中の男に今 復讐を誓う
これは一つの大きな音楽産業となってしまったMr.childreという虚構と、自身へ向けた決意のフレーズでした。
まだこの時点では過去の自分の存在を、完全に受け入れられていません。
鏡の中の男に向けた眼差しは、強い意思をおびていたでしょう。
しかしそこから新たな音楽を届け続け、自信を取り戻した彼は違います。
Wake me up!行こうよ
吐き気をもよおしそうな 鏡の中の湿っぽい顔した人よ またいつか会おう
凹んではひねくれていた 昨日も連れて行こう
この目の前にある恐ろしくて それでいて優しい海原を
僕は泳いでく 君と泳いでく
鏡の中の過去を完全に許容し、自分を認めています。
この自信は、自分が他者から認められたという物からきているとても強いエネルギーです。
表彰台に登った記憶なんかない それで何不自由なく暮らしてきた
ひょっとしたら「あきらめろ」って僕は 僕自身を説得してきたのかも
気付けば実感もないまま、大きすぎる存在になってしまった。そんな事を考える暇もなく。
だけどそれで音楽を続けることができている。
だから自分たちには『Mr.Children』しかないとPOPミュージックの検証に挑んでいった。
Wake me up!祈るように ありきたりの日々を
自分自身にかけた催眠術を解いて 目を開こう
「心の闇」だなんだって 時代の所為にしてきたろう?
この街中にある 満ち足りていて でも空虚な砂漠を 君と歩いてく
過去に理由を押し付けて、呪縛にように心を閉ざすのはもう終わった。
音楽は生活にありふれた当たり前の物で、飽和しているこの世の中。
だからこそ、あなたと進んでいきたい。
彼らは自分たちの音楽を信じ、遂にここまで辿り着きました。
『Mr.Children』の持つ音楽の良さを再定義し『伝える』という作業から、歌い手と聴き手が音楽と意思を『共有』する。
これこそ彼らのPOP再検証における、一つの大きな着地点です。
このライブで6万4000人が気持ちを一つにして唄った『口笛』
これこそが今のMr.Childrenが一番やりたかった事なのではないでしょうか?
虚構に迷っていく、ある意味きっかけとなった楽曲『Innocent world』
明日も進んで行くつもりだよ いいだろう? mr,myself
陽のあたる坂道を昇るその前に また何処かで会えるといいな
その時は笑って 虹の彼方へ放つのさ
イノセントワールド 果てしなく続く
イノセントワールド
あの頃は夢見た世界に、ただ登っていくことが宿命としか考えていなかった自分。
だけど今は全く違う気持ちで、この坂道と虹を登ろうとしています。
もう一人の愛すべき自分に、笑顔で別れを告げて。
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