『川谷 絵音』
この名前を聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?
ゲスの極み乙女のボーカル?
インディゴなんとかのボーカル?
バンドを掛け持ちしまくってるアーティスト?
不倫していた人?
うん、どれも正解だ。
だけど街頭インタビューをしたら、恐らく最初と最後の回答が多いと思う。
つまり、ゲスの極み乙女のボーカル。
そして不倫していた人。
恐らくそのイメージは悪い。
異常なくらい悪い。
一般人からすればゲスの音楽性は受け入れやすいとは思わないし、茶の間向きではないことは確か。
そしてワイドショーで垂れ流された不毛なゴシップの影響で、もはや不倫のイメージしかないですよね。
散々気持ち悪いとか異常とか生理的に無理とか叩いて、話のネタとストレスの捌け口にされて終わり。
僕も異常だと思うよ。
川谷絵音の才能の凄さと、世の中の空気が。
川谷絵音の才能を潰す空気
僕の妻が川谷絵音を目にしたのは確か、私立恵比寿中学のイベントに岡崎体育が出演した時の事。
その時ゲスの極み乙女も出演していて、偶然彼らの演奏を聴いたそう。
そこで家に帰ってきた妻が言ってたよ。
「なんかね、演奏も凄く上手くて。みんな楽しそうに音楽してた。絵音がパーカーでかわいかったよ」
あ?絵音?いきなり呼び捨てかよ。
パーカーが可愛かっただと?星野源といい川谷絵音といいパーカー着てゆるかわいいアピールしてる男に女はすぐ心を許す。オンナは変わる。
お前が目当てで見に行った岡崎体育こそパーカー着てるだろ。寧ろパーカーしか着てないだろ。そっちのパーカー感想は無しか?
誰がどう着こなそうと、あのパーカーonパーカーを生み出した嵐の櫻井翔先輩の着こなしに勝てる奴なんていない。
そう、これだ。
実際ゲス不倫ゲス不倫キノコキノコ言ってたワイドショーと、ヤフコメで叩いてた人間たちは彼らの音楽を聴いてない。
周りが気持ち悪いと言えば自分もそれに乗っかってなんとなーくで気持ち悪がる。
日本酒かワイン飲みながらヤフコメでマウントマウントマウント。
音楽なんか聴いちゃいない。聴く気なんてない。完全に空気と先入観で彼の価値を判断している。
川谷絵音の音楽に触れるより宮根誠司とデーブスペクターの声聴いてた回数の方が多いだろお前ら。
ウチの妻はそこまで嫌っていなかったけど、あの騒動以来「猟 奇 的 な キ ス を 私 にし て」とか部屋に流れようもんなら桜井和寿に替えてくれ替えてくれの大リクエスト。
お前が今リクエストした桜井和寿だってギリギリ不倫して「心 に キ ス し た い」とか歌ってんじゃねえか。
何が違うんだよ。後者の方が心がムズムズするぞ。
カラオケで人が気持ちよく歌ってる最中にデンモクの中止ボタン押して平気で「あ、間違えた」みたく他の曲勝手に流すんじゃねえ。
Tomorrow never knowsのラスサビ入る直前のデンデンデン デンデンデン デンデンデンデーーーーーーん(ドゥーーーーーーン↑)で停止ボタン押したろか。
川谷絵音の才能
つまりあれだ。
あの騒動で川谷絵音の音楽を嫌いになった人は恐ろしい程増えた訳で、その風評被害の影響で彼はいつまでも世間から正しい評価をされない。
いや、本人はきっと評価なんてされなくていいと思っているだろう。
本当にYouTubeで一曲フルで流して曲の構成がダメだとかボーカルの声が本当に受け付けないとかドラムが男受け良さそうな顔しながらドラムも上手い所が気に食わないとかキーボードが急に「コポゥ!」とか言い出す無邪気さに困惑して友達になれないとかベースの演奏技術が凄すぎてテラスハウスで一緒になったらすぐ受け入れてしまいそうだから無理とかならわかる。まだわかるよ。
けど何も聴きやしないでワイドショーやメディアが垂れ流すゴシップ報道を全身でシャワーの様に浴びたあげく「無理、異常」とか言ってツイッターでイイねを押す事に対し、何か違うと思ってしまう僕が異常なのか。
音楽が大好きだけど、これといって知識も無い僕でもわかる彼の凄さ。
あの曲のクオリティを作れるだけでなく、その精度をボッコボッコと量産する異常さ。
桜井和寿なら曲作ってサッカーやってレコーディングしてライブやってサッカーやって家で家族サービスして…とかだろ。
才能の塊では同じだけども、メディアもほとんど出ないしまとまって休みも取ってそうだし。
川谷絵音の場合は曲作ってライブやって雑誌やメディア出て他人に曲提供してPV撮影こなしてテレビ出てまた曲作って…
常にこれの×3~5だ。複数のバンドやプロジェクトでこの活動を掛け持ちだ。
しかも手を抜いたり捨て曲なんて無い。全てにおいて毎回完全に期待や予想を超えてくる。
そして聴いた瞬間に、すぐに彼の曲だとわかる。
つか絵音ってなんだよその名前。芸大生かよ。
名前にも才能が滲み過ぎてそりゃえのぴょんとか言われて女が集まるよ。
女たらしかと思いきや所属バンドのゲスの極み乙女のベースである休日課長に対して「課長のベーステクは本当に最高で音楽界でもキテるとか」真面目に誉めるとこあたりが僕ら野郎から見ても一発で両性にモテるやつだとわかる。クラスに2人はいる。
いつ睡眠とっていつ食事とっていつ美容室いってんだよ。その片目だけ隠した前髪はなんだよ。もう片方カットする前に美容師途中で死んだんか。
これでギターを始めたのが大学からとか毎月CDを40枚聴いてるとか言ってて彼の時間の流れはどうなっているのか。メディア露出とライブ以外は精神と時の部屋にいるんだろうか。
しかも若い頃はMr.Childrenを聴いていて所属バンドのindigo la Endもスピッツのインディゴ地平線由来とか好きなギタリストは長岡亮介(元東京事変)とかどんだけ僕のツボ押さえてるんすかもう嫌。
印象的なメロディやリフレイン。
不満や迷いの心情をウィットに吐き出し、日常の美しい風景を切り取り、心の揺れや普遍性を表現する言葉の一つひとつは胸を掴まれる。
歌の中に入り込んだ様な感覚を僕たちに与えてくれる、私小説的な世界。
彼自身が歌っていなくても、彼が触った曲は名前を伏せられててもすぐわかる。
僕がこういう感覚を受けるのは川谷絵音、亀田誠治、椎名林檎、長岡亮介。
この辺りの皆さんはもう曲に名前が書いてある。
織田裕二と木村拓哉くらい書いてある。
あのまま何かが一つでも違ったら、川谷絵音の才能は音楽会から消えてたかも知れないと思うと恐ろしい
ゲスの極み乙女。『だけど僕は』
手軽に得られる小さな快楽
彼をそこまで叩く必要があったんだろうか。
数年後に手のひら返ししてる人たちはどういう気持ちなんだろうか。
サカナクションの山口一郎は彼の不倫騒動について、音楽界でバックアップする様な空気やアクションを起こすべきだったと発言している。
メディアによって火をつけられた一般層に対し、音楽界側が何もせず無かった事の様に放置していた状況に対しての提言だ。
確かにあの時の音楽界は騒動についてだんまりだった。
別に誰かが代表して弁護すべきとか発言すべきとかではないが、あれだけエンターテイメント界で大きくなった話題に対し誰も口にしない。
シーンで受け皿や何らかの言及があったりと、そういった雰囲気を作ることもなく話だけがメディアや茶の間で肥大していったいた状態。
音楽雑誌等のメディアが触れなかったのも無理はないと思う。
あの世の中の作られた空気の中で彼を弁護する形にするのは、非常に難しい。
マイノリティの偏見に満ちた火の粉がこちらにもかかってくるからだ。
そして音楽雑誌が批評するのはあくまで音楽自体であって、私生活に言及したりするのはあくまでその先に音楽に繋がる話があるから。
だから自分たちの紙面に良い影響を及ぼさない対象について、スルーするのが懸命だったのだと思う。
自分たちの仕事を続けるには、炎上せずかつ効果的に売上を立てられる保証があるアーティストを聴き手に見せる必要がある仕事だから。
きっと個人的にはバックアップや助言をしたりする事はあったのかもしれないが、シーンを見つめる音楽ファンとしては動向を見守るしかなかった。
けれど、本当に何かの才能に恵まれている人は絶対に戻ってくる。
必要としている人がいるから。
それは音楽に限らず、全てに言える事。
確かにその騒動以外にも色々と火をつけてしまってる彼だけど、アーティストなんてそんなもんじゃないだろうか。
別に彼は天皇陛下に奉祝曲を提供する様なアーティストではない。
それはパーカーonパーカー先輩に任せておけば良い。彼には彼の役割があり、それを全うしている。
ただのいちアーティストだ。
セックスドラッグロックンロールだろ。
好きにやらせてやってくれよ。僕らはそれ以上に彼らから貰ってるもんがあるさ。
表現する人間がいて、批判する人間がいる。
このやり取り、健全。至極真っ当。
この一連の騒動について実害を被ったレコード会社や事務所の方たちが怒り心頭なのはわかる。
けどそれ以外の表現者の環境に立った事もない人間が、その相手の人格、能力、功績をボロカスに批判するってなんなんだよ。凄くカッコわりいよ。
アンタらは本田圭佑がゴールネット揺らさずビッグマウスをかましていた時も同じ事言ってたんだろ。
伸びしろが無いのはどちらだろうか。
少し斜に構えて辛辣に言ってる気になった暴言を茶の間やキーボードの前で吐いて、今日もつまらん自分維持。
きっとバンド4個掛け持ちして人々の琴線に触れるメロディと世界観溢れる詞を書いて曲出して異性にモテて自分の意見を持ってる様な人なんだろうな。
もしかしたらそれで会社が潰れたり、露頭に迷ったりする人がいるかもしれない。そりゃその人たちは人生かかってる。必死だ、大問題だ。
けど全く何も関係ない一部の人間が薪をどんどん投げて燃やして騒いで燃えてる家を見て笑って
それで楽しいか?なんか怒ってるけど何に怒ってんの?自分のストレスの捌け口はそこだけか?
一瞬だけ深呼吸してみようよ。
自分には何も関係がない事がわかるから。
そのちょっと言いたい無駄で傲慢な正義感が無数に集まって一人の人間が死ぬんだ。
やるせないよ。
ゲスの極み乙女。『だけど僕は』
音楽を目で聞く僕ら
最近は音楽業界全体が苦しい。音楽と聴き手の在り方についての過渡期の中で『音楽の良さ』だけで純粋に聞き手を増やすのが厳しいのはわかる。
売り出す方も必死で、PVに工夫凝らしたりブランディングしたり奇をてらったバンド名をつけたり。(あ、ゲス…)
とにかく売れようと、印象づけようと、商品価値を高めようと、入口を広げるのに必死だ。
誰かから与えられた音楽。
多分そういう風に聴かされた音楽は、何が良くて聴いてるのか問われた聞かれた際に、その理由を答えられない。
別に完璧に何かを答えられなくていいのかもしれないけど、人生でそういう物が自分に積み重なれば積み重なる程に虚しくなる。
周りのみんなが聴いてるから。
もしくは周りのみんなが聴いてないから。
こうやって音楽プレイヤーのプレイリストには耳で聴いた音楽じゃなくて目で見た音楽だけが残っていく。
その音楽は本当に自分がいいと思ってる音楽?
本当に自分が心から良いと思っていれば、信じて聴き続ければいい。
音楽自体ではなく、他者からの見られ方を気にして揃えたプレイリスト。
そんなイメージだけで音楽を聴いてしまうのは勿体無い。
それって、本当に自分の好きな物か?
今は彼へのバッシングは落ち着いている。
逆にテレビに出演して「以外と普通の人だった」とかいう感想が出てきたり、才能をフルに発揮した活動に引っ張りだこだ。
そうだよ、普通の人だよ。
異常にしたのは僕らだ。異常なのは僕たちだ。
彼は今4つのバンドを手掛けながら、その全てで高いクオリティを発揮し活動をしている。
自分の才能を世の中に提示し、本業の音楽で揶揄やバッシングを黙らせるくらいのエネルギー。そこに人は魅力され、人を集める。
彼の音楽を聴いて気付くこと。
そこには人間らしい弱さ、情景を思い浮かべられるメロディや美しく流れる歌詞。
それを覆すような散文的なユーモア、そしてポップスとしての純度。
そんな魅力的な音がそこにはある。
僕はこれからも彼が作る音楽が本当に楽しみで、ずっと聴いていたい。
誰かに作られ、見せられている『彼』ではなく
僕たちが自分で追い求めた『彼』の音楽を耳にすると、その中身は全く異なる印象を感じるに違いない。
誰も彼の存在を消せない。
汚せない。覆せない。代わりはいない。
そりゃそうだ。
私以外私じゃないの。
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